用語解説
読み物や子育てのエビデンスに出てくる専門用語を、やさしく解説します(全53語)。
あ行
- 愛着(アタッチメント)・安全基地(あいちゃく)子どもが養育者との間に結ぶ、安心のための情緒的な絆。安心して頼れる「安全基地」があるからこそ、子どもは外の世界へ挑戦できます。
- アンダーマイニング効果(あんだーまいにんぐこうか)もともと楽しんでやっていたことにごほうびを与えると、かえって「自分からやりたい」という意欲が下がってしまう現象。
- HSP(感覚処理感受性)(えいちえすぴー)周囲の刺激や他者の感情を、人より深く・強く受け取りやすい性格特性。アーロンが提唱した「感覚処理感受性(SPS)」のことで、医学的な診断や障害ではありません。
- ADHD(注意欠如多動症)(えーでぃーえいちでぃー)不注意(集中の持続が難しい)、多動・衝動性といった特性が、年齢に比べて強く、生活に影響している状態。脳の発達特性で、しつけの問題ではありません。
- エクスポージャー(段階的曝露)(えくすぽーじゃー)不安やこわさを感じる対象に、少しずつ慣れていく方法。避け続けると不安は強まり、小さく近づくほど和らぐ、という原理にもとづきます。
- SEL(社会性と感情の学習)(えすいーえる)感情の理解・コントロールや、人との関わり方などを意図的に育てる教育の取り組み。心の安定だけでなく、学力にも良い影響があると報告されています。
か行
- 感情コーチング(かんじょうこーちんぐ)子どもの感情を「悪いもの」として抑え込ませるのではなく、受け止めて言葉にし、対処を一緒に考える関わり方。
- 感情調整(かんじょうちょうせい)感情をなくすのではなく、気づき、名前をつけ、状況に合う形で扱う力。かんしゃく、ストレス対処、対人関係の土台になります。
- ギフテッド(ぎふてっど)同年齢の子に比べて、特定の領域で著しく高い能力を示す状態。教育上の概念で、医学的な診断ではありません。才能と困難を併せ持つ「2E」もあります。
- 共感(認知的共感・情動的共感)(きょうかん)相手の気持ちを「理解する」認知的共感と、「感じ取る」情動的共感の2つの側面があります。いじめを止める力や思いやりの土台になります。
- 共調整(きょうちょうせい)子どもが自分で感情を整える力(自己調整)が育つ前に、まわりの大人が「一緒に落ち着く」ことで支える関わり。自己コントロールの土台になります。
- グリット(やり抜く力)(ぐりっと)長期目標に向かう情熱と粘り強さ。成果と関連するとされますが、誠実性との重なりや、努力だけを強調しすぎる危うさも指摘されています。
- 限局性学習症(LD)(げんきょくせいがくしゅうしょう)全体の知的な発達に遅れがないのに、読み・書き・計算など特定の領域の学習に著しい困難がある状態。「努力不足」ではなく、脳の情報処理の特性です。
- 好奇心(こうきしん)「知りたい」「やってみたい」という心の動き。学びや記憶を後押しし、内発的なやる気の源になります。
- 心の理論(こころのりろん)相手にも自分とは違う気持ち・考え・知識があると理解し、それを推し量る力。4〜5歳ごろに大きく育ち、対人関係の土台になります。
さ行
- 時間的展望(じかんてきてんぼう)過去・現在・未来をどう見通し、今の行動と結びつけるかという心理的な枠組み。目標設定、自制心、主体性と関わります。
- 自己決定理論(じこけっていりろん)やる気の「質」を説明する理論。自律性・有能感・関係性という3つの欲求が満たされると、内側からのやる気と心の健康が育つとされます。
- 自己肯定感(じここうていかん)自分を価値ある存在として受け止める、肯定的な感情。大切な土台ですが、「高ければ高いほど良い」わけではないことも分かってきました。
- 自己効力感(じここうりょくかん)「自分はこれをやり遂げられそうだ」という見通し・自信。困難に挑む意欲や粘り強さを支えます。自己肯定感(自分への肯定的な感情)とは別の概念です。
- 自制心(マシュマロ実験)(じせいしん)目の前の欲求を抑えて、長い目で見て大切なことを選ぶ力。「マシュマロ実験」で知られますが、近年は環境の影響も大きいと分かってきました。
- 実行機能(じっこうきのう)目標に向けて自分の考えや行動を調整する脳の働き。「抑制」「ワーキングメモリ」「認知の柔軟性」の3つが土台とされ、学力や感情のコントロール、対人関係を支えます。
- しなやかマインドセット(成長マインドセット)(しなやかまいんどせっと)「能力は努力や工夫で伸ばせる」という考え方。「能力は生まれつきで変わらない」とする硬直(固定)マインドセットと対比されます。
- 自閉スペクトラム症(ASD)(じへいすぺくとらむしょう)対人コミュニケーションのスタイルや、興味・感覚の現れ方に特性がある状態。「スペクトラム(連続体)」と呼ばれ、現れ方は一人ひとり大きく異なります。
- 主体性(エージェンシー)(しゅたいせい)自分の人生や行動を、自分で考えて選び、動かしていく力・姿勢。「やらされる」のではなく「自分ごと」として取り組む感覚です。
- 情動知能(EI/EQ)(じょうどうちのう)感情を知覚し、理解し、活用し、調整する力。共感・感情調整・対人関係と関わりますが、能力モデルと自己評価モデルを区別して見る必要があります。
- 食物新奇性恐怖(しょくもつしんきせいきょうふ)見慣れない食べ物を警戒して避ける傾向。子どもに多く、ある程度は生まれつき。くり返し経験するなかでやわらいでいきます。
- スティルフェイス実験(すてぃるふぇいすじっけん)親が急に無表情・無反応になると、赤ちゃんが強い不安を示すという古典的な実験。やり取り(応答)が子どもにとっていかに大切かを示します。
- ストレスとコーピング(すとれすとこーぴんぐ)ストレスにどう対処するか(コーピング)の考え方。出来事そのものより、「どう捉え、どう対処するか」が、ストレスの影響を左右します。
- 誠実性(せいじつせい)責任感、計画性、粘り強さ、約束を守る力などを含む性格特性。Big Fiveの一つで、学業や仕事、健康行動とも関わるとされます。
- セルフ・コンパッション(せるふこんぱっしょん)失敗したときや苦しいときに、自分を責めすぎず、思いやりをもって受け止める力。自己肯定感とは違い、うまくいかない自分への関わり方に焦点があります。
た行
な行
は行
- 発達障害(神経発達症)(はったつしょうがい)生まれつきの脳の働き方の特性により、発達の現れ方に凸凹(得意・不得意の差)が見られる状態の総称。現在は「神経発達症」とも呼ばれ、ASD・ADHD・限局性学習症などを含みます。
- 非認知能力(ひにんちのうりょく)IQやテストでは測りにくい力の総称。やり抜く力、自制心、意欲、社会性、感情のコントロールなどを含み、将来の幸福や成功と関わるとされます。
- 批判的思考(ひはんてきしこう)情報や意見をそのまま受け取らず、根拠・前提・別の見方を確かめながら考える力。相手を否定することではなく、よりよく判断するための思考です。
- フェードアウト効果(ふぇーどあうとこうか)早期の教育や介入で一度上がった効果が、時間とともに薄れていく現象。「早く始めれば差がつき続ける」とは限らないことを示します。
- 傍観者効果(ぼうかんしゃこうか)困っている人がいても、その場に人が多いほど、一人ひとりは助けに動きにくくなる心理現象。いじめの場面でも働きます。
- 保護因子(ほごいんし)逆境のなかでも子どもの育ちを守り、レジリエンスを支える「条件・要因」。信じてくれる大人の存在、感情調整や自己コントロールの力、安心できる環境などを指します。
ま行
- マインドフルネス(まいんどふるねす)今この瞬間の体験に気づき、評価しすぎずに受け止める心のあり方。注意の調整、感情調整、ストレス対処と関わります。
- マタイ効果(またいこうか)「持つ者はさらに与えられる」——すでにできる子はさらに伸び、そうでない子との差が時間とともに広がっていく現象。読書でよく知られます。
- メタ認知(めたにんち)自分の考えや学び方を、一段上から客観的に見てコントロールする力。「分かっているか」を自分で点検し、やり方を調整する土台になります。
- モデリング(観察学習)(もでりんぐ)子どもが、まわりの人の行動を見て学ぶこと。教えなくても、大人の振る舞いや感情の出し方を見て、まねて身につけていきます。
や行
- ユニバーサルデザイン学習(ゆにばーさるでざいんがくしゅう)学び方の違いを前提に、教材の提示・表現・参加方法を複数用意する考え方。あとから個別対応するだけでなく、最初から学びやすく設計します。
- 養育者感受性(よういくしゃかんじゅせい)子どものサインに気づき、その意味を読み取り、タイミングよく応答する力。愛着や安全基地、共調整の土台になります。
- 養育スタイル(よういくすたいる)親の関わり方を、あたたかさと統制のバランスで整理する考え方。権威的・権威主義的・許容的・放任的などに分けて説明されます。
- 予期不安(よきふあん)これから起こるかもしれない怖いことを考えて、不安が高まる状態。不安を避け続けると強まりやすく、段階的に慣れる支援と相性があります。
- 予測可能性(よそくかのうせい)次に何が起こるかを見通せること。予定・ルール・大人の反応が予測しやすいと、子どもは安心して行動しやすくなります。