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スティルフェイス実験

すてぃるふぇいすじっけんStill-Face Experiment ・ 最終更新 2026-08-11

親が急に無表情・無反応になると、赤ちゃんが強い不安を示すという古典的な実験。やり取り(応答)が子どもにとっていかに大切かを示します。

親子の応答的な関わりと表情の変化を、スティルフェイス実験としてやさしく表したイラスト

どんな実験か

スティルフェイス実験は、トロニックら(1978)の研究です。親が普通にやり取りした後、急に無表情になって反応しなくなると、赤ちゃんは笑いかけたり声を出したりして関わりを取り戻そうとし、やがてぐずって不安を示します。

実験は3つの場面からなります。まず親子が普段どおりに遊び、次に親が数分間、無表情のまま反応をやめ、最後にまたやり取りを再開します。無表情の間、赤ちゃんは笑いかける・指さす・声を出すなど、あの手この手で親の反応を引き出そうとし、それでも返ってこないと、視線をそらす、ぐずる、体をのけぞらせるといった苦痛のサインを見せます。

この反応は生後数か月の赤ちゃんでも見られます。ことばを話すずっと前から、赤ちゃんが相手の反応を期待し、やり取りの「ずれ」に敏感であることを示しています。

この実験が発表された当時、赤ちゃんは受け身の存在と見られがちでした。スティルフェイスの結果は、赤ちゃんを「やり取りの積極的な参加者」としてとらえ直すきっかけになったと評価されています。

何を教えてくれるか

赤ちゃんは一方的に世話されるだけの存在ではなく、応答のあるやり取りを求めていることが分かります。反応が返ってこない状態は、子どもにとってストレスになります。

メスマンら(2009)のレビューでは、この現象が多くの研究で安定して確認されていることが示されています。スティルフェイス実験は、その後の親子関係の研究や、産後うつが子どもに与える影響の研究などの土台にもなりました。

また、実験の最後の「再会場面」も重要です。やり取りが再開されると、赤ちゃんは時間をかけて機嫌を立て直していきます。関係は「ずれない」ことではなく「ずれても直せる」ことが大切だという考え方(修復)につながっています。

養育者の応答は、赤ちゃんにとって「自分の働きかけには意味がある」という感覚の芽を育てる材料にもなると考えられています。

日常へのヒント

いつも完璧に応える必要はありません(やり取りは「ずれて→直す」のくり返しです)。ただ、ながらスマホなどで反応が途切れがちになっていないか、ときどき振り返る価値があります。

日常の場面でいえば、授乳やあやしの最中にスマホに見入って表情が消えていないか、子どもの呼びかけに生返事が続いていないか——といった振り返りに使える知見です。

ただし、この実験は「無反応が続くと赤ちゃんはストレスを感じる」ことを示したものであって、「一瞬でも目を離すと発達に悪い」という意味ではありません。家事や仕事で応えられない時間があるのは当然で、そのあとのやり取りで十分に取り戻せます。

「今日は疲れて反応が薄かったな」という日があっても、翌日から取り戻せます。長い目で見た関わりの積み重ねと、ずれたときの修復が大切——というのが、この研究群から受け取れるメッセージです。

よくある誤解

「スティルフェイス実験=スマホ育児の害の証明」と紹介されることがありますが、これは正確ではありません。実験が扱ったのは完全な無表情・無反応という特殊な状況で、スマホを見ながらの育児がこれと同じだと示したわけではありません。スマホとの関連は、テクノフェランス研究として現在も検証が続いている段階です。

また、「常に敏感に応え続けなければならない」というメッセージでもありません。研究者たちはむしろ、普通の親子のやり取りにはずれが多く、それを修復するプロセスこそが子どもの育ちを支えると論じています。完璧な応答ではなく、「気づいたら戻る」で十分だと考えられています。

なお、産後うつなどで表情や応答が乏しくなりがちなときは、親の努力不足ではなく、支援が必要なサインです。一人で抱えず周囲や専門機関を頼ることが、結果として子どもの環境を守ることにつながります。

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参考にした研究

本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。

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