情動知能(EI/EQ)
じょうどうちのう ・ Emotional Intelligence ・ 最終更新 2026-08-11
感情を知覚し、理解し、活用し、調整する力。共感・感情調整・対人関係と関わりますが、能力モデルと自己評価モデルを区別して見る必要があります。

情動知能とは
情動知能は、感情を読み取り、理解し、考えや行動に活かし、必要に応じて調整する力として提案された概念です。一般にはEQと呼ばれることもあります。
研究では、能力として測るモデルと、自分の性格や傾向として答えるモデルがあります。すべてを一つの「EQの高さ」として単純に見るのではなく、どの力を指しているかを分けて考えることが大切です。
この概念は1990年ごろにSaloveyとMayerによって提案され、その後Golemanの著書をきっかけに「EQ」として世界的なブームになりました。ただし、通俗的な「EQが人生を決める」といったイメージと、研究で扱われる情動知能とは、必ずしも同じではない点に注意が必要です。
研究でわかっていることと、測定の課題
研究の世界では、情動知能を「能力」としてテスト形式で測る立場(能力EI)と、「自分は感情の扱いが得意だと思うか」といった自己評価で測る立場(特性EI)が区別されています。この二つは測っているものがかなり異なり、結果も一致しにくいことが知られています。つまり「EQテストの点数」と言っても、何をどう測ったかで意味が変わります。
「EQが高ければ必ず成功する」といった強い主張には、研究の裏づけが十分とは言えません。一方で、感情を理解し扱うスキルを学校の授業で育てるSEL(社会情動的学習)については、子どもの社会性や学業への良い影響を示す研究の蓄積があります。派手な宣伝文句と、地道な研究知見を分けて見ることが大切です。
情動知能の研究は今も発展途上で、従来の知能や性格の概念と何がどう違うのか、という議論も続いています。家庭では、テストの数値に一喜一憂するより、「感情に気づき、言葉にし、扱う」という日々の営みを大切にするほうが実際的です。
子育てとの関係
情動知能は、共感、感情調整、SELと重なります。子どもが自分の気持ちを言葉にし、相手の気持ちを想像し、対立を解決する力の土台になります。
感情の語彙が増えると、子どもは「なんかやだ」を「くやしい」「はずかしい」「さみしい」と区別して伝えられるようになります。気持ちを細かく言い分けられることは、自分の状態を理解し、まわりに助けを求めるうえでも役立ちます。
日常で育つ場面
「今どんな気持ち?」「相手はどう感じたかな?」と感情を言葉にする会話、絵本の登場人物の気持ちを考える時間、落ち着く方法を一緒に試す経験が支えになります。
たとえば、きょうだいげんかの後に「本当はどうしてほしかったの?」「相手はどんな顔をしていた?」と一緒に振り返ってみる。友だちにおもちゃを貸せた日に「貸してあげたとき、どんな気持ちだった?」と聞いてみる。こうした日々の何気ない会話の積み重ねが、感情を扱う力の練習の場になります。
ゲームや遊びの中でも育ちます。負けて悔しがる場面は、感情を扱う絶好の練習機会です。「悔しいね。もう1回やる?今日はやめておく?」と、気持ちを認めながら選択肢を渡すと、感情と行動を切り分ける経験になります。
よくある誤解
「EQは生まれつき決まっている」「簡単なテストで正確に測れる」というのは誤解です。感情を扱うスキルは経験の中で育つと考えられていますし、世の中に出回っている簡易診断の多くは、研究上の裏づけが限られています。
また、「感情的にならないこと」が情動知能の高さではありません。感情をきちんと感じたうえで、それを理解し、状況に合わせて活かせることが本質です。子どもが泣いたり怒ったりすること自体は、情動知能が低いサインではなく、感情を学んでいる途中の自然な姿です。
「親の感情の扱いが下手だと子どももだめになる」と心配しすぎる必要もありません。感情の扱い方は、親自身も子育ての中で学び直せるものです。怒りすぎた後に「さっきは言いすぎたね、ごめんね」と修復する姿を見せることも、子どもにとって大切な学びになります。
関連する読み物
参考にした研究
- Salovey & Mayer, 1990(情動知能)
- Mayer, Salovey & Caruso(能力モデル)
- Durlak et al.(SELのメタ分析)
- Petrides & Furnham(特性EIと能力EIの区別)
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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