内発的動機づけ
ないはつてきどうきづけ ・ Intrinsic Motivation ・ 最終更新 2026-08-11
ごほうびや罰のためではなく、「やること自体が楽しい・やりたい」という内側からのやる気。長続きしやすく、創造性や学びの質を高めます。

内発的動機づけとは
内発的動機づけとは、外からのごほうびや罰のためではなく、「面白いから」「やってみたいから」といった、活動そのものへの興味から生まれるやる気のことです。デシとライアンの研究で深く調べられてきました。
これに対し、ごほうび・評価・罰など外からの理由で動くのが「外発的動機づけ」です。どちらも役立ちますが、内発的なやる気のほうが、粘り強さや学びの深さにつながりやすいとされています。
子どもの姿でいえば、頼まれてもいないのに図鑑を眺め続ける、積み木の続きを翌日もやりたがる、覚えたての言葉を何度も使いたがる——こうした「夢中」の状態が、内発的動機づけの典型です。誰かにほめられるためではなく、それ自体が楽しいから続いているのです。
なお、実際の生活では、内発と外発は白黒はっきり分かれるものではなく、混ざり合っています。「最初はほめられたくて始めたピアノが、いつのまにか弾くこと自体が楽しくなっていた」というように、やる気の質は時間とともに移り変わっていくものです。
ごほうびが裏目に出ることも
デシら(1999)のメタ分析は、もともと楽しんでやっていたことに物のごほうびを足すと、かえって内発的なやる気が下がりやすいことを示しました(アンダーマイニング効果)。
「やらされている」という感覚が、「自分からやりたい」という気持ちを押しのけてしまうのです。
ただし、この効果はどんな場面でも必ず起こるわけではありません。もともと興味のない活動にはあまり当てはまらず、ほめ言葉のような「情報として伝わるごほうび」では起こりにくいとされています。研究の結果には条件による幅があり、「ごほうびは絶対にダメ」と単純化できるものではない点も知っておくと安心です。
内発的なやる気を育てるには
自分で選べる場面をつくる(自律性)、できた実感を持てるようにする(有能感)、安心できる関係のなかで取り組む(関係性)——この3つが満たされると、内発的なやる気は自然に育ちます。
家庭での例を挙げると、絵本を「これを読みなさい」と渡すのではなく、2〜3冊から選んでもらう。お手伝いも「野菜を洗う係とお皿を並べる係、どっちがいい?」と選択肢にする。小さなことでも「自分で決めた」という感覚が、取り組む姿勢を変えていきます。
子どもが夢中になっているときは、途中で口を出したり評価したりせず、そっと見守るのも大切な関わりです。「上手だね」と言う代わりに「そのお城、窓がたくさんあるね」と見たままを言葉にするだけでも、子どもは「見てもらえた」と感じ、楽しさが守られます。
年齢が上がるにつれて、任せる範囲を広げていくことも大切です。幼児なら二つの選択肢から、小学生なら計画の順番ややり方を、思春期には目標そのものを本人に委ねていく。発達に合わせて「自分で決めた」経験を増やすことが、内側のやる気を長く支えます。
結果より過程に光を当て、すでに楽しんでいることにはごほうびを足しすぎない。それが、長く続くやる気を守ります。
よくある誤解
「内発的動機づけが良くて、外発的動機づけは悪い」という単純な二分法は誤解です。宿題や歯みがきのように、最初は外からの働きかけで始まる活動はたくさんあります。外発的なやる気も、自分なりの意味を見つけるうちに、だんだん内側のやる気に近づいていくと考えられています。
また、「放っておけば内発的なやる気が湧いてくる」というのも正確ではありません。安心できる関係や、ちょうどよい難しさの環境があってこそ、興味は育ちます。大人の役割は、やる気を「注入する」ことではなく、興味が芽生えやすい土壌を整えることだといえます。
「ごほうびを一切使ってはいけない」と思い詰める必要もありません。大切なのは使いどころで、すでに楽しんでいることには足さない、物より言葉や共感で応える、という原則を押さえれば十分です。詳しくは「アンダーマイニング効果」の項目も参考にしてください。
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参考にした研究
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