ストレスとコーピング
すとれすとこーぴんぐ ・ Stress and Coping ・ 最終更新 2026-08-11
ストレスにどう対処するか(コーピング)の考え方。出来事そのものより、「どう捉え、どう対処するか」が、ストレスの影響を左右します。

ストレスとコーピングとは
ラザルスとフォルクマン(1984)は、ストレスを「出来事」そのものではなく、「自分にとってどれほど脅威か」という評価と、「どう対処できそうか」という見積もりで決まると考えました。この対処の仕方を「コーピング」と呼びます。
同じ出来事でも、人によってストレスの感じ方が違うのはこのためです。たとえば発表会は、ある子には「見てもらえる楽しい機会」であり、別の子には「失敗が怖い脅威」です。出来事と心の間に「評価」というステップを置いたことが、この理論の大きな特徴です。
この見方に立つと、子どものストレス対策は「嫌なことをすべて取り除く」ことではなく、「捉え方と対処の引き出しを一緒に増やす」ことだと整理できます。
コーピングのいろいろ
コーピングには、問題そのものを解決しようとする「問題焦点型」と、気持ちを整える「情動焦点型」があり、状況に応じて使い分けることが大切です。子どもはまず、大人と一緒に落ち着く経験(共調整)を通じて、対処の仕方を学んでいきます。
問題焦点型の例は、テストが不安なら勉強の計画を立てる、友だちとけんかしたら話し合う、などです。情動焦点型の例は、深呼吸する、好きな音楽を聴く、信頼できる人に気持ちを話す、などです。どちらが優れているというものではなく、変えられる問題には問題焦点型、すぐには変えられない状況では情動焦点型、と使い分ける柔軟さが鍵とされます。
コンパスらの研究グループは、子どものコーピングの発達を整理し、年齢とともに使える対処の種類が増え、状況に合わせた選択ができるようになっていくことを示してきました。ただし、コーピング研究は自己報告に頼る部分が大きく、「どの対処がどの子に効くか」を断定できるほどの精密さはまだありません。
大切な視点:「毒性ストレス」
ショーンコフらは、強いストレスでも支えてくれる大人がいれば耐えられる(耐えうるストレス)一方、支えのないまま長く続く強いストレスは発達に害を及ぼしうる(毒性ストレス)と整理しました。鍵は、ストレスをゼロにすることではなく、支える関係があることです。
ここからも、家庭でできることの中心は「子どもを強くする訓練」ではなく、「安心して戻ってこられる関係でいること」だと分かります。
家庭でできる例
たとえば、園や学校から不機嫌で帰ってきた日は、問いただす前に、おやつと水分でひと息つく時間を取ります。落ち着いてから「今日は何かあった?」と聞くほうが、言葉が出やすくなります。
子どもがイライラしているときは、「深呼吸を3回」「水を飲む」「ぎゅっと抱きしめてもらう」など、その子に合う落ち着き方を、穏やかなときに一緒に見つけてリスト化しておくと、いざというとき使いやすくなります。
また、大人が自分のコーピングを見せることも学びになります。「今日は疲れたから、お風呂にゆっくり入って回復するね」と言葉にすることで、ストレスは気づいて手当てするものだと伝わります。
よくある誤解
「ストレスはすべて悪いもの」というのは誤解です。適度なストレスは挑戦や成長の一部であり、支えのある環境で乗り越えられる経験は、むしろ対処の力を育てます。問題なのは、支えのないまま強いストレスが続くことです。
「気晴らしは逃げ」でもありません。すぐに変えられない状況では、気持ちを整える情動焦点型のコーピングが合理的な選択になります。ただし、ゲームや動画などの気晴らしだけに偏り、問題への対処を先延ばしし続けると、かえってストレスが長引くこともあるため、バランスが大切です。
「子どもにはストレスなんてない」と軽く見るのも危険です。入園・進級・引っ越し・きょうだいの誕生など、大人には小さく見える変化も、子どもには大きなストレスになりえます。子どものサイン(寝つきの悪化、赤ちゃん返り、腹痛など)に気づくことが、支えの第一歩です。
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参考にした研究
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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