感情コーチング
かんじょうこーちんぐ ・ Emotion Coaching ・ 最終更新 2026-08-11
子どもの感情を「悪いもの」として抑え込ませるのではなく、受け止めて言葉にし、対処を一緒に考える関わり方。

感情コーチングとは
感情コーチングとは、心理学者のゴットマンが提唱した、子どもの感情に寄り添う関わり方です。怒りや悲しみといった感情も大切なサインとして受け止め、名前をつけ、どう対処するかを一緒に考えていきます。
ゴットマンら(1996)は、こうした関わりをする親のもとで、子どもが感情をうまく扱えるように育ちやすいことを示しました。
背景にあるのは、「感情に良い悪いはなく、どの感情にも意味がある」という考え方です。怒りは「大切なものを守りたい」のサイン、不安は「危ないかもしれない」のサイン。感情そのものを敵にせず、子どもとつながるチャンスとして扱うのが、この関わり方の出発点です。
ゴットマンは、親自身が感情をどうとらえているか(メタ情動)に注目し、子どもの感情を軽視・否定しがちな関わりと、感情を導く関わりを区別しました。感情コーチングは後者の代表で、「感情の家庭教師」のような役割をイメージすると分かりやすいかもしれません。
「抑え込ませる」関わりとの違い
「泣くな」「怒るな」と感情を否定したり、軽視したりする関わりは、感情をコントロールする力を育てにくいとされています。感情コーチングは、感情そのものは認めたうえで、出し方・対処を教える点が異なります。
デナムら(2003)の研究でも、幼児期に感情を理解し扱う力が高い子は、その後の対人関係や学校適応が良い傾向がありました。
ただし、こうした研究の多くは親の関わりと子どもの育ちの「関連」を示したもので、感情コーチングをすれば必ずこうなる、と保証するものではありません。子どもの気質や家庭の状況によって合う形は違うため、「型どおり」より「わが子に合う形」を探す姿勢が現実的です。
実践のステップ
①子どもの感情に気づく ②感情を否定せず受け止める ③「くやしかったね」と名前をつけて言葉にする ④許されることと許されないことの線を示す ⑤どうすればよかったかを一緒に考える——おおむねこうした流れです。
感情は受け止め、行動には線を引く。この組み合わせが、感情コーチングの核心です。
たとえば、おもちゃを取られて弟を叩いてしまった場面なら、「取られてくやしかったんだね(受け止める)。でも、叩くのはなしだよ(線を引く)。次はどうすればいいと思う?(一緒に考える)」という流れになります。買い物先で「買って!」と泣く場面でも、「ほしかったね。今日は買わない日だよ」と、気持ちと行動を分けて伝えます。
すべてのステップを毎回やる必要はありません。時間がないときは「そっか、いやだったんだね」と受け止めるだけでも意味があります。特に大切なのは、問題解決を急がないこと。気持ちが落ち着く前にアドバイスを始めると、子どもは「分かってもらえなかった」と感じやすくなります。
よくある誤解
「気持ちを受け止める=要求を全部のむ」というのは誤解です。感情コーチングは、気持ちには寄り添いながら、行動のルールは一貫して守る関わりです。むしろ「気持ちは分かってもらえる。でもダメなものはダメ」という体験の積み重ねが、子どもに安心と見通しを与えます。
「いつも完璧に対応しなければ」と気負う必要もありません。イライラして先に叱ってしまう日があるのは自然なことです。あとから「さっきは強く言ってごめんね。どんな気持ちだった?」とやり直せば十分で、この修復のプロセス自体が、感情との付き合い方のお手本になります。
「ネガティブな気持ちを話題にすると、余計に落ち込ませてしまう」という心配も、研究の知見とは合いません。感情を言葉にすることは、感情に飲み込まれることではなく、むしろ整理して手放す助けになると考えられています。日常のおだやかな時間に気持ちについて話す習慣が、いざというときの支えになります。
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参考にした研究
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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