傍観者効果
ぼうかんしゃこうか ・ Bystander Effect ・ 最終更新 2026-08-11
困っている人がいても、その場に人が多いほど、一人ひとりは助けに動きにくくなる心理現象。いじめの場面でも働きます。

傍観者効果とは
傍観者効果とは、緊急の場面で周りに人が多いほど、かえって誰も行動を起こしにくくなる現象です。「誰かがやるだろう」と責任が分散し(責任の分散)、また「周りが動かないから大丈夫なのかも」と互いに様子をうかがってしまうために起こります。
ダーリーとラタネ(1968)の実験で示され、社会心理学の古典的な知見として知られています。
大切なのは、これが「冷たい人が多いから」起こるのではない、という点です。ふつうの優しい人でも、集団の中では同じ心理が働きます。「人ごみで誰かが困っていても声をかけそびれる」という経験は、多くの大人にも心当たりがあるのではないでしょうか。
なお、その後の研究では、状況がはっきり危険だと分かる場合には、人が多くても助けが起こりやすいことも報告されています。「人が多いと必ず誰も動かない」というわけではなく、状況のあいまいさや雰囲気に左右される現象だと考えられています。
いじめにおける「傍観者」
いじめは加害者と被害者だけの問題ではありません。ソーンバーグら(2012)は、見て見ぬふりをする傍観は「中立」ではなく結果としていじめを支えてしまうこと、そして傍観者が「擁護者」に変わるといじめが止まりやすいことを示しました。
子どもが動けないのは、意地悪だからではありません。「自分も標的になるかも」という不安、「どうすればいいか分からない」という戸惑い、「みんな黙っているから騒ぐことではないのかも」という空気の読み合い。傍観の裏には、こうした自然な心理があります。だからこそ、責めるのではなく「動き方を知っている」ことが助けになります。
「動ける一人」を増やす
フィンランドのKiVaプログラム(Karna, 2011)は、加害者・被害者だけでなく傍観者に働きかけることで、いじめを減らすことに成功しました。
家庭でも、「もし自分だったらどう感じる?」と相手の気持ちを想像する会話が、見ているだけにとどまらず動ける力を育てます。
「動く」といっても、正面から止めに入ることだけが方法ではありません。困っている子にあとで「大丈夫?」と声をかける、一緒にその場を離れる、信頼できる大人に伝える——こうした小さな行動も、立派な「擁護者」の一歩です。選択肢がいくつもあると知っているだけで、動ける可能性は高まります。
家庭でできることの例としては、ニュースや絵本の場面で「この子はどんな気持ちかな」「あなたならどうする?」と話し合ってみる、そして「先生や親に伝えるのは告げ口ではなく、人を守る行動だ」と日ごろから伝えておくことが挙げられます。
また、大人が日常で小さな親切を実行して見せることも効果的です。落とし物を拾って届ける、困っている人に「大丈夫ですか」と声をかける。親のそうした姿は、「困っている人がいたら動くのが当たり前」という基準を、言葉より強く子どもに伝えます。
よくある誤解
「見ていただけなら関係ない」というのは、この現象を考えるうえでいちばん大きな誤解です。研究では、観衆や傍観者の存在そのものが、いじめが続く土壌になりうることが指摘されています。逆にいえば、見ている一人ひとりの小さな変化に、状況を変える力があるということでもあります。
また、「うちの子は優しいから傍観者にはならない」とも言い切れません。傍観者効果は性格ではなく状況の力で起こるからです。優しさを行動につなげるには、気持ちだけでなく「具体的にどう動くか」の引き出しを、日ごろの会話で増やしておくことが役立ちます。
この話題を子どもに伝えるときは、プレッシャーを与える必要はありません。伝えたいのは「動けないのは普通のこと。でも小さな一歩に力がある」というメッセージです。責任を背負わせるのではなく、選択肢を手渡す会話を目指したいところです。
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参考にした研究
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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