デフォルトモードネットワーク
でふぉるともーどねっとわーく ・ Default Mode Network(DMN) ・ 最終更新 2026-08-11
課題に集中していない「ぼーっとした」ときに、かえって活発になる脳のネットワーク。記憶の整理、自己理解、人の気持ちの想像などに関わります。

デフォルトモードネットワークとは
デフォルトモードネットワーク(DMN)は、レイクルら(2001)が見つけた、特定の作業をしていないときにこそ活発に働く脳のネットワークです。「安静時」「ぼーっとしているとき」に優位になります。
過去の出来事を思い返す、自分について考える、人の気持ちを想像する、未来を思い描く——といった「内側に向かう思考」に関わります。
「デフォルト(初期設定)」という名前は、何かの課題に取り組むと活動が下がり、課題が終わると戻ってくる、いわば脳の基本モードであることに由来します。脳は休んでいるように見える間も、多くのエネルギーを使って働き続けていることが知られています。
バックナーら(2008)の総説によれば、DMNは脳の内側の領域を中心とした広いネットワークで、記憶の整理・将来の計画・他者理解など、人らしい心の働きの多くと関連することが報告されてきました。子どもの発達のなかでも、このネットワークは年齢とともに結びつきを強めていくことが示唆されています。
「休んでいる脳」の大切な仕事
何もしていないように見えても、脳は経験を整理し、意味づけ、「自分」という感覚を育てています。イモルディーノ=ヤンら(2012)は、休息や内省がこのネットワークを通じて社会性や道徳的思考を支えると指摘しました。
課題に集中する「外向き」の働き(実行機能など)とはシーソーのような関係にあり、両方のバランスが大切だと考えられています。
一方で、内側に向かう思考には「同じ悩みをくよくよと反すうする」といった側面もあり、DMNの働きは良い・悪いで割り切れるものではありません。大切なのは、外の課題に集中する時間と、内側を自由に漂う時間が、生活のなかで両方確保されていることだと考えられます。
ただし、DMNの研究の多くは大人を対象とした脳画像研究で、子どもについての知見はまだ発展途上です。「ぼーっとすれば創造性が上がる」といった単純な因果関係が証明されているわけではない点には注意が必要です。
子育てでの意味
予定や刺激で隙間なく埋めるより、ぼんやりする余白を残すこと。退屈や空想の時間が、創造性や自己理解の土台になります。
家庭での例を挙げると、①習い事や動画で毎日を埋めきらず、何も予定のない時間を意識的に残す、②車や電車での移動中、すぐにスマホや動画を渡さず、窓の外を眺める時間も認める、③「ぼーっとしてないで!」と声をかけたくなったとき、少しだけ待ってみる——といったことが考えられます。
空想やひとり遊びに没頭しているとき、子どもの頭の中では経験の整理や想像の世界づくりが進んでいるのかもしれません。大人から見た「何もしていない時間」を、少しだけ肯定的に眺めてみる価値はありそうです。
睡眠も広い意味での「オフラインの時間」です。眠っている間に記憶が整理されることはよく知られており、日中の余白と十分な睡眠は、学びを定着させる裏方として働いていると考えられます。
「余白の時間」といっても、長時間である必要はありません。入浴中の空想、寝る前の布団でのおしゃべり、帰り道にぼんやり歩く時間——そうした数分の隙間が、子どもにとって一日の出来事を消化する時間になっている可能性があります。
よくある誤解
「ぼーっとする時間が大事」と聞くと、「なら動画を見ている時間もいいのでは」と思うかもしれませんが、映像を受け取り続けている間の脳は、内側を自由に漂う状態とは異なります。刺激が絶えず入ってくる時間と、何も入ってこない余白の時間は、分けて考える必要があります。
また、DMNは「サボっている脳」でも「無駄な活動」でもありません。かといって「常にぼーっとさせるべき」でもなく、集中するときは集中し、休むときはしっかり休むという切り替えができることが大切だとされています。授業中の空想がすべて良いわけではないのと同じです。
関連する読み物
参考にした研究
- Raichle et al., 2001(デフォルトモードネットワーク)
- Immordino-Yang et al., 2012(休息・内省と発達)
- Buckner et al., 2008(DMNの総説)
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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