感情調整
かんじょうちょうせい ・ Emotion Regulation ・ 最終更新 2026-08-11
感情をなくすのではなく、気づき、名前をつけ、状況に合う形で扱う力。かんしゃく、ストレス対処、対人関係の土台になります。

感情調整とは
感情調整は、怒り・不安・悲しみ・喜びなどの感情に気づき、強さや出し方を状況に合わせて整える力です。感情を消すことではなく、感情を扱えるようになることを指します。
子どもは最初から一人で感情を調整できるわけではありません。大人に受け止められ、一緒に落ち着く経験を通して、少しずつ自分でも扱えるようになります。
心理学者のGrossは、感情が生まれてから表に出るまでの流れの中に、働きかけられるポイントが複数あると整理しました(感情調整のプロセスモデル)。状況を選ぶ・変える、注意の向け方を変える、出来事の意味づけを見直す、表に出る反応を整える、といった段階です。大人が普段なにげなく使っているこうした工夫を、子どもは経験の中で少しずつ身につけていきます。
研究でわかっていること
感情調整の発達は、乳児期から思春期まで長く続くプロセスとして研究されてきました。幼い頃は、養育者に抱っこやなだめで落ち着かせてもらう「外からの調整」が中心ですが、成長とともに、自分で注意をそらしたり、言葉で気持ちを表現したりする「自分での調整」へ少しずつ移っていくと考えられています。
感情に名前をつけて言葉にすることが、気持ちの整理を助ける可能性も指摘されています。ただし、研究の多くは特定の文化圏や実験場面で行われたもので、どの方法がどの子にも同じように効くと言い切れるわけではありません。子どもの気質や発達段階によって、合う方法や身につくペースは違うと考えておくのが現実的です。
感情コーチング・共調整との関係
感情コーチングは、感情に名前をつけ、対処を一緒に考える関わり方です。共調整は、大人と一緒に落ち着くプロセスです。どちらも、子どもの感情調整を育てる土台になります。
反対に、「泣かない」「そんなことで怒らない」と感情そのものを否定され続けると、子どもは気持ちを隠したり、自分が何を感じているのかわからなくなったりすることがあります。感情は受け止めつつ、行動には線を引く。この区別が、感情調整を育てる関わりの基本と考えられています。
家庭でできること
まず「怒っているね」「悔しかったね」と感情を言葉にすること。次に「叩くのはだめ」「少し離れて深呼吸しよう」と行動の線引きと対処を示すこと。この順番が役立ちます。
たとえば、おもちゃを取られて手が出そうになったとき。「取られて嫌だったね」とまず気持ちを言葉にしてから、「叩くのはなし。『返して』と言ってみよう」と代わりの行動を示します。買い物先で「買って」と泣き出したときも、「欲しかったね。でも今日は買わない日だよ」と、気持ちの受け止めとルールの線引きを分けて伝えます。
寝る前に「今日うれしかったこと・嫌だったこと」を一つずつ話す習慣も、感情に名前をつける練習になります。また、親自身がイライラしたときに「ちょっと深呼吸してくるね」と口に出して落ち着く姿を見せることも、子どもにとって一番身近なお手本になります。
年齢によって支え方も変わります。乳児期は抱っこやトントンで一緒に落ち着くことが中心、幼児期は気持ちに名前をつけて言葉を貸すこと、学童期になると「どうすれば落ち着けるか」を本人と一緒に作戦として考えることが増えていきます。
よくある誤解
「感情調整ができる子」とは、いつも冷静で泣かない子のことではありません。泣くことも怒ることも自然な反応で、大切なのはその感情を少しずつ扱えるようになることです。また、かんしゃくが多いことが、そのまま親の関わりの失敗を意味するわけでもありません。感情をつかさどる脳の働きは長い時間をかけて発達していくため、幼児期に感情の波が大きいのはむしろ自然なことです。
「一度教えればできるようになる」ものでもありません。大人でも感情的になる日があるように、感情調整は行きつ戻りつしながら育つ力です。うまくいかない日があっても、一緒に落ち着く経験を積み重ねていくことが、長い目で見た心の土台になります。
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参考にした研究
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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