モデリング(観察学習)
もでりんぐ ・ Modeling / Observational Learning ・ 最終更新 2026-08-11
子どもが、まわりの人の行動を見て学ぶこと。教えなくても、大人の振る舞いや感情の出し方を見て、まねて身につけていきます。

モデリングとは
モデリング(観察学習)は、バンデューラの社会的学習理論の中心概念です。直接教えられなくても、他者(モデル)の行動を観察し、まねることで学習が起こります。有名な「ボボ人形実験」では、大人の攻撃的な行動を見た子が、それをまねることが示されました。
バンデューラ(1977)は、学習は自分が直接ほめられたり叱られたりしなくても、他人の行動とその結果を見るだけで起こると考えました。これは「行動はごほうびと罰で形づくられる」と考えていたそれまでの学習理論を、大きく広げるものでした。
モデリングは、ことばを話し始める前の乳児期からすでに始まっています。大人の表情をまねる、拍手をまねる、おもちゃの電話を耳に当てる——こうした「まね」は、子どもが世界でのふるまい方を学ぶ基本の方法です。
感情や態度も伝わる
行動だけでなく、こわがり方・落ち着き方・人への接し方も伝わります。親が不安そうにすると子もこわがりやすく、落ち着いた姿は安心のモデルになります(恐怖のモデリング学習)。
フィールドらの研究では、見慣れないものについて大人が不安そうな情報を伝えると、子どももその対象をこわがるようになることが示されています。注射の前に親が緊張していると子も身構える、といった日常の場面にも通じる知見です。
逆に言えば、大人が落ち着いて対処する姿は、「こういうときはこうすればいい」という生きた見本になります。失敗したときに「まあ、やり直せばいいか」とつぶやく姿も、立ち直り方のモデルです。
モデルになるのは親だけではありません。きょうだいや友だち、映像の中の人物からも子どもは学びます。年上の子のふるまいをまねて、急にできることが増える——というのも、よく見られる観察学習の姿です。テレビや動画の登場人物の口調を子どもが急にまね始めるのも、身近な例のひとつです。
「見せる」が最強の教え方
「やりなさい」より「やってみせる」。あいさつ・正直さ・感情の扱い方など、大人自身がモデルになることが、いちばん効く教え方です。
家庭での例を挙げると、①あいさつを教えたいなら、親自身が近所の人に気持ちよくあいさつする姿を見せる、②本好きに育ってほしいなら、親が本を楽しむ時間をつくる、③イライラしたとき「ちょっと深呼吸しよう」と口に出して落ち着いてみせる——などがあります。
「言っていること」と「やっていること」がずれると、子どもは行動のほうをまねる傾向があります。スマホを見ながら「スマホばかり見ないの」と言っても伝わりにくいのは、このためです。
完璧なお手本である必要はありません。間違えたときに「ごめんね」と謝る姿、分からないことを「調べてみよう」と調べる姿は、間違いや未知とのつき合い方のモデルになります。
感謝やいたわりのことばも同じです。家庭の中で「ありがとう」「助かったよ」が自然に行き交っていれば、子どもはそれを人との関わり方の標準として吸収していきます。
よくある誤解
「子どもは見たものを何でもまねする」わけではありません。バンデューラ自身、観察学習には注意・記憶・再現する力・動機づけといった条件が関わるとし、子どもは見たもののなかから選んで取り入れると考えました。身近で親しみのあるモデルほど、まねされやすいとされています。
また、「一度悪いお手本を見せてしまったら取り返しがつかない」ということでもありません。子どものモデルになるのは、日々くり返される関わりの全体です。たまの失敗より、失敗のあとの謝り方や仲直りの仕方まで含めて見せられる、と考えれば気が楽になるかもしれません。
なお、観察学習の研究には実験場面のものが多く、たとえば暴力的な映像が実生活の行動へ与える影響の大きさについては、現在も研究者の間で議論が続いています。「見た=そうなる」と短絡せず、日常の関わり全体を大切にするのが現実的です。
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参考にした研究
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