食物新奇性恐怖
しょくもつしんきせいきょうふ ・ Food Neophobia ・ 最終更新 2026-08-11
見慣れない食べ物を警戒して避ける傾向。子どもに多く、ある程度は生まれつき。くり返し経験するなかでやわらいでいきます。

食物新奇性恐怖とは
食物新奇性恐怖(neophobia)とは、食べたことのない・見慣れない食べ物を警戒して口にしたがらない傾向のことです。とくに幼児期に強く表れ、好き嫌いや偏食の背景のひとつになっています。
これは「わがまま」ではなく、ある程度は生まれつきの傾向だと考えられています。叱って直すものではありません。
この傾向は2歳ごろから強まり、幼児期にピークを迎え、学童期にかけて少しずつやわらいでいくのが一般的な経過とされています。新しい食べ物への警戒の強さには生まれ持った気質の影響も小さくないと報告されており、同じ家庭で育ったきょうだいでも差が出るのは自然なことです。
「偏食」「好き嫌い」と重なる言葉ですが、新奇性恐怖は「未知のものへの警戒」に焦点を当てた概念です。よく知っているのに嫌う「好き嫌い」とは区別して考えると、対応が見えやすくなります。
なぜあるのか
見慣れないものを警戒するのは、有害なものを口にしないための、いわば安全装置だと考えられています。動き回るようになる幼児期に強まるのは、進化的に理にかなった反応とも言われます。
ちょうど自分で歩き回り、手の届くものを口に入れられるようになる時期に警戒心が強まるのは、拾い食いなどの危険から身を守るしくみの名残という見方です。「初めてのものをまず疑う」のは、生き物としてはむしろ健全な反応ともいえます。
また、コークら(2007)の研究では、新奇性恐怖が強い子ほど野菜や果物の摂取量が少ない傾向が示されています。「嫌いだから食べない」というより、「見慣れないから警戒している」段階の子が多いと考えられます。
やわらげ方は「くり返し出す」
ウォードルら(2003)は、嫌っていた野菜でも少しずつ味見をさせて出し続けると、好んで食べるようになっていくことを示しました。新しい食べ物を受け入れるには、ふつう8〜15回の経験が必要だとされています。
「一度拒否された=嫌い」と決めつけず、プレッシャーをかけずにまた食卓へ。経験を重ねることが、いちばんの近道です。
バーチとマーリン(1982)の古典的な研究でも、口にした回数が多い食べ物ほど好まれるようになることが示されており、「経験が好みをつくる」ことは食の分野でくり返し確認されてきました。ただし、研究の多くは実験場面でのもので、家庭で試したときの効果の大きさには幅がある点は覚えておくとよいでしょう。
家庭での例を挙げると、①新しい野菜は「食べなさい」と言わずに食卓に出し続け、見る・においをかぐ・一口なめるだけでもOKにする、②親が同じものをおいしそうに食べる姿を見せる、③買い物や調理を手伝ってもらい、食材に触れる機会を増やす——などがあります。どれも「口に入れる前の慣れ」を増やす工夫です。
食べられたときは大げさにほめるより、「食べたね」と淡々と受け止めるほうが、次からのプレッシャーになりにくいとも言われます。
よくある誤解
「一度嫌がったものは、もう食べない」は誤解です。実際には、拒否されると出すのをやめてしまう家庭が多い一方、くり返し経験したあとで受け入れが進むことが研究で示されています。数回の拒否は「嫌い」ではなく「まだ慣れていない」だけかもしれません。
「ごほうびで釣って食べさせればよい」にも注意が必要です。「食べたらデザートね」といった交換条件は、その場では効いても、その食べ物自体を好きになることにはつながりにくいという報告があります。無理強いや取引よりも、楽しい雰囲気の食卓と気長なくり返しが基本です。
なお、食べられる食品が極端に少ない、体重が増えないなど生活に支障がある場合は、気質の範囲を超えている可能性もあります。その場合は小児科や自治体の栄養相談など、専門機関に相談することも選択肢です。
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参考にした研究
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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