← 用語解説一覧へ

レジリエンス

れじりえんすResilience ・ 最終更新 2026-08-11

困難や逆境にぶつかっても適応し、立ち直っていく力。生まれつきの才能ではなく、環境や関わりのなかで育つと考えられています。

しなやかに戻る植物と子どもを通して、レジリエンスと保護因子を明るく表したイラスト

レジリエンスとは

レジリエンスとは、ストレスや逆境、失敗にさらされても、それに適応して回復していく力のことです。「折れない心」というより、しなって戻る「しなやかさ」に近い概念です。

心理学者のマステンは、レジリエンスを特別な才能ではなく、ふつうの育ちのなかで働く仕組み("ordinary magic")だと表現しました。誰にでも育ちうる力なのです。

また、レジリエンスは「一度身につけたら終わり」という性質のものではありません。同じ子でも、時期や状況によって発揮できたりできなかったりします。「あるかないか」で決まる才能ではなく、「そのときの環境との組み合わせで変わる状態」としてとらえるのが、研究の見方に近い理解です。

カギになる「保護因子」

ワーナーら(1993)は、ハワイで約40年にわたり子どもを追跡し、厳しい逆境でもたくましく育った子に共通する要素(保護因子)を見つけました。その代表が、「自分を信じてくれる大人が一人いること」でした。

親でなくても、祖父母・先生・コーチなど、誰か一人が安心の土台になれます。

ただし、こうした長期追跡の研究は「関連が見られた」ことを示すもので、何がどの子に効くかを正確に予言できるわけではありません。文化や時代によっても条件は変わるため、研究の知見は「ヒント」として受け取るのが適切です。

「保護因子」「リスク因子」との違い

レジリエンスと「保護因子」は、しばしば混同されますが、同じものではありません。レジリエンスは、逆境にあっても適応し立ち直っていく「力・結果」そのものです。一方、保護因子は、そのレジリエンスを高める「条件・要因」を指します(信じてくれる大人の存在、感情を言葉にする力、安心できる環境など)。

逆に、貧困・虐待・孤立など、不適応のリスクを高める要因は「リスク因子」と呼ばれ、保護因子と対になります。子どもは、リスク因子と保護因子の綱引きのなかで育つ、と考えられています。

たとえるなら、レジリエンスはでき上がった料理(結果)、保護因子は材料や調味料(要因)、リスク因子は味を損なう要素です。だからこそ、子どもを直接「強くする」より、保護因子を一つずつ増やし、リスク因子をやわらげる関わりが現実的です。

日々の関わりで育てる

つらい気持ちを言葉にして整理する関わりや、感情スキルを育てる教育(SEL)が、立ち直る力を支えると報告されています(Durlak, 2011 ほか)。

励ましや原因の追及より、「どんな気持ちだった?」と一緒に言葉にしていくこと。その積み重ねが、しなやかさを育てます。

日常の場面でいえば、友だちとけんかして帰ってきた日に、すぐ解決策を出さず「くやしかったんだね」とまず受け止める。運動会で転んでしまった日に、「最後まで走ったところを見ていたよ」とプロセスに目を向ける。小さな失敗を安心して経験できることが、立ち直る練習の機会になります。

よくある誤解

「レジリエンスを育てる=あえて厳しい環境に置いて鍛える」というのは誤解です。過度なストレスはむしろ発達の妨げになりうることが知られています。子どもを支えるのは「安心の土台があるうえでの、乗り越えられる程度の挑戦」であって、突き放すことではありません。

「泣かない子・へこたれない子が、レジリエンスの高い子」というイメージも正確ではありません。つらいときに泣いたり、助けを求めたりできることは、むしろ回復を支える大切な力です。感情を出さないことと、立ち直る力があることは、別のものです。

「レジリエンスを育てれば逆境の影響はなくなる」という期待も現実的ではありません。子ども個人の力を育てることと同じくらい、逆境そのものを減らすことや、周囲の環境を整えることが大切だと、多くの研究者が強調しています。

関連する読み物

参考にした研究

本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。

運営: 合同会社5マイクロ / 監修: 子育てエビデンス研究所

← 用語解説一覧へ