かみつき・たたく — 幼児の攻撃性の理由と関わり方
投稿日 2026-07-07 ・ 更新日 2026-07-07 ・ 約6分で読めます
わが子が友だちにかみついたり、たたいたりすると「うちの子は乱暴なのでは」と不安になります。けれど1〜3歳の身体的な攻撃は、多くの子に見られる発達上のごく自然な姿です。研究が示す発達の道すじと、家庭での落ち着いた関わり方を整理します。

2歳前後がピーク — 攻撃性は「発達のふつう」
かみつきやたたく行為は、しつけの失敗ではなく、ほとんどの子が通る発達の一過程です。Tremblayら(2004, Pediatrics)はカナダの大規模な追跡研究で、生後17か月の時点で大多数の子がきょうだいや友だち、大人に対してたたく・かむといった身体的攻撃を示すことを報告しました。つまり攻撃的なふるまいは特別な子だけのものではなく、この時期にはむしろ当たり前に見られるのです。
Tremblayらの分析では、身体的攻撃の頻度はおおよそ生後30〜42か月(2歳半〜3歳半ごろ)にかけて高まり、その後は多くの子で着実に減っていきます。彼は「子どもは環境から攻撃を学ぶのではなく、攻撃を使わない方法をこれから学んでいくのだ」と述べています。乱暴さは身につけたものではなく、これから手放していく途中の姿だと考えると、見え方が変わってきます。
アメリカ小児科学会(healthychildren.org)も、2歳ごろの子は自分の感情の衝動をまだうまくコントロールできず、いらだちが急に泣く・たたく・かむといった形で表れると説明しています。これは「困った現実」に対処する、その子にとって今できる精いっぱいの方法なのです。
ことばより先に手や口が出る理由
なぜ手や口が先に出るのでしょうか。大きな理由のひとつは、言語の発達がまだ追いついていないことです。Nemours KidsHealthは、いらだち・怒り・こわさといった強い感情を、幼い子はことばでうまく伝えられないため、かむという行動で表すことがあると説明しています。「やめて」「いやだ」と言えない代わりに、体が動いてしまうのです。
実際、攻撃性が減っていく時期はことばが育つ時期と重なります。Tremblayらの研究でも、多くの子が就学前の数年間で身体的攻撃を自分で調整できるようになっていきます。語彙が増え、自分の気持ちを「かして」「いやだ」と言葉にできるようになるにつれて、かみつきやたたく必要が薄れていくと考えられています。
また、かみつきには欲求不満の表現だけでなく、歯がゆさ(歯の生えはじめ)、探索、相手の反応を試す、注目を得たいといった理由も混ざります(Nemours KidsHealth)。「悪意」ではなく「まだ別の手段を持っていない」という前提で見ると、対応の方向が見えてきます。
対応の原則 — 落ち着いて止め、短く伝え、代わりを示す
関わりの基本は、強くしかることではなく、落ち着いてくり返し教えることです。Nemours KidsHealthは、まず冷静に「かまないよ」と短くはっきり止めること、長い説教はしないことをすすめています。長々と言い聞かせても、この年齢の子には伝わりにくく、かえって注目という「ごほうび」になってしまうことがあるためです。
止めたあとは、かまれた相手への手当てと気づかいを先にし、そのうえで本人には「かして、って言おうね」と代わりの行動(代替行動)を教えます。気持ちが高ぶっているときは、別の遊びへ気をそらす(リダイレクト)のも有効です。アメリカ小児科学会も、罰よりも一貫した枠組みと、良い行動をほめる関わりが負の行動を減らすとしています。
強い罰や体罰は逆効果になりやすい点にも注意が必要です。攻撃を攻撃で止めようとすると、子どもはむしろ「困ったときは力を使う」というモデルを受け取ってしまいます。なお、かみつきやたたく行為は3〜4歳ごろまでに自然と落ち着くのがふつうですが、その後も激しく続く・悪化する・他の気がかりな行動を伴う場合は、かかりつけ医に相談しましょう(healthychildren.org)。
今日からできること
- 感情がたかぶる前に止める。空腹・眠気・人混みなど荒れやすい場面を予測し、早めに切り上げたり、別の遊びへ気をそらしたりして、爆発の手前で支える。
- かんだ・たたいた瞬間は、冷静に短く「かまないよ」と止め、長い説教はしない。まず相手を気づかい、それから「かして、って言おうね」と代わりの言葉や行動を教える。
- 落ち着いているときに、良いやりとりをその場でほめる。「いやだって言えたね」と認める積み重ねが、力ではなくことばで伝える力を育てる。
参考にした研究
各研究について、日本語の解説記事と、原典(英語論文)を探せる Google Scholar 検索へのリンクを掲載しています。
- Tremblayら, 2004(早期幼児期の身体的攻撃の発達軌跡と予測因子。生後17か月で大多数が身体的攻撃を示す/Pediatrics) / 原典を探す(Google Scholar)
- Tremblay, R.(身体的攻撃の発達と予防。攻撃は2〜3歳半ごろ頂点に達しその後減少する/Encyclopedia on Early Childhood Development) / 原典を探す(Google Scholar)
- アメリカ小児科学会(2歳児の感情の発達。衝動の制御が未熟で、たたく・かむが見られる/HealthyChildren.org) / 原典を探す(Google Scholar)
- Nemours KidsHealth(幼児のかみつきの理由と落ち着いた対応の手順/医療監修) / 原典を探す(Google Scholar)
関連する用語解説
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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