0〜2歳とテレビ・動画 — 乳幼児とスクリーンの最新エビデンス
投稿日 2026-07-04 ・ 更新日 2026-07-04 ・ 約7分で読めます
スマホや動画は、いまや子育ての日常に溶け込んでいます。「見せすぎは良くない」と聞くと不安になりますが、大切なのはゼロにすることではなく、付き合い方です。WHOやアメリカ小児科学会のガイドライン、研究でわかってきたことをもとに、0〜2歳とスクリーンの現実的な向き合い方を整理します。

ガイドラインは何と言っているか
世界保健機関(WHO)が2019年に出した「5歳未満の子どもの身体活動・座位行動・睡眠に関するガイドライン」では、1歳未満の乳児にスクリーン(テレビや動画など)を見せることは推奨されていません。2〜4歳については、見るとしても1日1時間以下にとどめ、少ないほど望ましいとされています。背景には、画面の前で静かに過ごす時間が長くなるほど、体を動かす遊びや睡眠が削られやすいという考え方があります。
アメリカ小児科学会(AAP)の2016年の方針「Media and Young Minds」も近い立場です。生後18か月未満ではビデオ通話を除くスクリーンメディアを避け、18〜24か月で取り入れる場合は質の高い番組を選び、保護者が一緒に見て言葉を添えることをすすめています。日本でも日本小児科学会が2004年に「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と提言し、2歳までの視聴を控えることや、長時間化への注意を呼びかけてきました。
これらはいずれも「スクリーンは絶対に悪」と断じるものではありません。共通しているのは、この時期の子どもにとっては画面よりも、人とのやり取りや体を使った遊びが育ちの中心だという見方です。ガイドラインは目安であって、少し超えた日があったからといって責められるものではありません。
なぜ乳幼児は画面から学びにくいのか
小さな子どもには「ビデオ・デフィシット効果(video deficit)」と呼ばれる現象が知られています。同じ内容でも、画面越しに見せられたときよりも、目の前の大人が実演したときのほうが、子どもはよく覚え、よく真似します。ストラウスとサムソンが2021年に発表したメタ分析(0〜6歳、59件の研究をまとめたもの)でも、画面からの学びは対面に比べておよそ半標準偏差ぶん低いという結果が示されました。この差は年齢が上がるほど小さくなっていきます。
つまり乳幼児期は、画面の中の情報を現実の世界に結びつけて理解する力がまだ育ちきっていません。だからこそ、画面を見せること自体よりも、その時間に本来あったはずの「大人との応答的なやり取り」が減ってしまうことのほうが、発達の観点では気がかりだと考えられています。
一方で、この効果は工夫しだいでやわらぐことも分かってきました。同じメタ分析や関連研究では、子どもの反応に合わせて言葉を返すような「社会的なやり取り」が画面に伴うと、学びの差が縮まることが示されています。これは次に述べる共視聴の意義につながります。
共視聴という現実的な工夫
完全にスクリーンを断つのが難しい家庭は多いはずです。そこで研究やガイドラインが重視するのが「共視聴(一緒に見る)」です。AAPは、見せるなら保護者が隣で一緒に見て、映っているものに言葉をかけ、子どもが見ているものの意味を説明することをすすめています。「わんわんだね」「赤いボールが転がったね」と声をかけるだけで、受け身の視聴が大人とのやり取りに変わります。
これは前述のビデオ・デフィシット効果を補う発想でもあります。画面が一方的に流れるのではなく、子どもの反応に大人が応えることで、画面の内容が現実とつながりやすくなります。動画を子守りとして一人で長時間見せ続けるのと、短い時間を一緒に楽しむのとでは、同じ視聴時間でも意味合いが変わってきます。
気をつけたいのは、スクリーンが対面のやり取りや睡眠を押しのけてしまう場面です。WHOが睡眠時間も含めて1日の過ごし方を示しているように、就寝前の視聴で寝つきが遅れたり、食事中・遊びの時間が画面に置き換わったりすると、生活全体のバランスが崩れやすくなります。スクリーンを「何を減らすか」ではなく「何を守るか(やり取り・睡眠・体を動かす遊び)」から考えると、家庭に合った線が引きやすくなります。
今日からできること
- 1歳未満はできるだけ画面を主役にしない。見せるとしてもビデオ通話のように、人とのやり取りがある使い方から始める。
- 見せるときは隣に座り、「うさぎさんだね」などと声をかけながら一緒に見る。一人にして長時間流しっぱなしにしない。
- 食事中と就寝前1時間は画面をオフにし、やり取り・睡眠・体を動かす遊びの時間を先に確保する。
参考にした研究
各研究について、日本語の解説記事と、原典(英語論文)を探せる Google Scholar 検索へのリンクを掲載しています。
- WHO, 2019(5歳未満の身体活動・座位行動・睡眠ガイドライン。1歳未満はスクリーン非推奨、2〜4歳は1日1時間以下) / 原典を探す(Google Scholar)
- American Academy of Pediatrics(Media and Young Minds, 2016。18か月未満はビデオ通話を除き回避、共視聴を推奨) / 原典を探す(Google Scholar)
- HealthyChildren.org/AAP(デジタル時代の子育てとメディア方針の解説) / 原典を探す(Google Scholar)
- Strouse & Samson, 2021(ビデオ・デフィシットのメタ分析。Child Development誌) / 原典を探す(Google Scholar)
- 日本小児科学会, 2004(乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です) / 原典を探す(Google Scholar)
関連する用語解説
本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。
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