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心の理論

こころのりろんTheory of Mind ・ 最終更新 2026-08-11

相手にも自分とは違う気持ち・考え・知識があると理解し、それを推し量る力。4〜5歳ごろに大きく育ち、対人関係の土台になります。

二人の子どもが別々の考えを持つ様子を思考の泡で示した、心の理論のイラスト

心の理論とは

心の理論とは、「人にはそれぞれ心があり、自分とは違うことを考えたり感じたりしている」と理解し、相手の立場や気持ちを推し量る力のことです。日々のやり取りや、うそ・冗談・思いやりの土台になります。

「心の理論」という言葉は、もともとプレマックとウッドラフ(1978)がチンパンジー研究のなかで用いたもので、その後、子どもの発達研究の中心的なテーマになりました。相手の心は直接見ることができないため、表情やことば、状況から「たぶんこう思っているのだろう」と推測するしかありません。その意味で、一人ひとりが心についての「理論」を持っている、と表現されています。

この力が育つと、「わざとじゃなかったんだね」と相手の意図をくみ取ったり、「初めて聞く人には説明が必要だ」と気づいて話し方を変えたりできるようになります。友だち関係のすれ違いやトラブルの多くも、この力の育ちの途中経過と深く関わっています。

「誤信念課題」で調べる

心の理論の発達は、「サリーとアン課題」などの誤信念課題で調べられます。ウィマーとパーナー(1983)が考案したこの課題では、「自分は知っているが相手は知らない」状況を理解できるかを見ます。

たとえばサリーとアン課題では、サリーがビー玉をかごに入れて部屋を出た後、アンがビー玉を箱に移します。「戻ってきたサリーはどこを探すかな?」と聞かれて「かご」と答えられるのは、「サリーはビー玉が移されたことを知らない」という、相手の誤った思い込み(誤信念)を理解できているからです。3歳ごろの子は自分が知っている正解につられて「箱」と答えがちですが、これは発達の自然な通過点です。

ウェルマンら(2001)のメタ分析によれば、多くの子はおおむね4〜5歳ごろにこの力が大きく育ちます。

ただし、課題に通るかどうかは、質問の言い回しや子どもの言葉の力にも左右されます。課題の成績だけで「思いやりのある子かどうか」まで分かるわけではない点には注意が必要です。

やり取りのなかで育つ

心の理論は、人との関わりのなかで育ちます。ごっこ遊び、絵本での気持ちの会話、そしてきょうだいとのやり取りも役立ちます。ソンら(2018)は、適度なきょうだいげんかが「相手の気持ちを読む力」を育てる面があると示しました。

「○○ちゃんはどう思ったかな?」と相手の気持ちを想像する会話が、この力を後押しします。

日常の場面でいえば、絵本を読みながら「このクマさん、今どんな気持ちだと思う?」と尋ねてみる、おままごとで役になりきって遊ぶ、けんかの後に「妹はどうして泣いたのかな」と一緒に振り返る——といった関わりが挙げられます。「うれしい」「くやしい」「はずかしい」など気持ちを表すことばを、会話のなかで自然に使うことも、心の理解の育ちを支えると考えられています。

一方で、「こうすれば必ず伸びる」と言い切れるほど強い証拠がそろっているわけではありません。心の理論の育ち方は文化や言語によっても表れ方が異なることが報告されており、研究はいまも続いています。日々の会話のなかで気持ちに触れる機会を少し増やす、くらいの気持ちで取り入れるのがちょうどよさそうです。

よくある誤解

「4〜5歳で完成する力」と思われがちですが、誤信念課題に通るのは通過点にすぎません。皮肉や社交辞令の理解、複雑に入り混じった気持ちの読み取りは、学童期から思春期にかけて長く育ち続けます。

また、課題の通過が遅いからといって、ただちに発達に問題があるという意味ではありません。個人差は大きく、きょうだいの有無や日々の会話の経験によっても違いが出ることが報告されています。心配な場合は、一つの課題の結果ではなく日々の関わりの全体を見て、必要に応じて専門家に相談するのが安心です。

「相手の気持ちが分かる=やさしくできる」とも限りません。分かった上でどうふるまうかには、共感や自制心など別の力も関わります。気持ちの理解と行動は分けて見てあげると、子どもの姿がとらえやすくなります。

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参考にした研究

本記事は子育て世代向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・個別の専門的助言を 提供するものではありません。お子さんの発達・健康・心理に関する個別の判断が必要な場合は、 小児科医・心療内科医・臨床心理士・学校・自治体の相談窓口など、専門機関にご相談ください。

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